びぶりお・まにあの詩


by inugami_kyousuke

ランボオ全詩

栗津則雄訳。
おお~っ、「全詩」かよー。
…と思って、一瞬、ヨロコんだんだが、
全部載ってりゃイイってモンでもねーらしい。
何つーか、コレ…
教科書ガイドみてーな訳だ。
短歌とか俳句とかの意味を、「~することだなあ」とか書いてあるヤツ!


栗津則雄訳 → 〔おお季節よ……〕

おお季節よ、おお城よ、
無疵な心があるものか?

おお、季節よ、おお、城よ、

幸福の魔法をおれは究めてきた、
誰にもこれは逃げられぬ。

ああ幸福万歳だ! ゴールの国の
鶏が歌い鳴くそのたびに。

だがしかし! もう何も欲しくない、
幸福に養われてきたこの命。

この呪縛! 身も魂も奪われて、
努める気持もすっ飛んだ。

このおれの言葉で何がわかろうか?
言葉は飛んで、逃げてゆく!

おお、季節よ、おお、城よ!

〔不幸に引かれてゆくならば、
気に入られぬは必定だ。

うんざりしたと馬鹿にされ、
きっとすぐさま、お陀仏だ!

―――おお、季節よ、おお城よ!〕




中原中也訳 → 『幸福

  季節(とき)が流れる、城塞(おしろ)が見える、
  無疵(むきず)な魂(もの)なぞ何処にあらう?

  季節(とき)が流れる、城塞(おしろ)が見える、

私の手がけた幸福の
秘法を誰が脱(のが)れ得よう。

ゴオルの鶏(とり)が鳴くたびに、
「幸福」こそは万歳だ。

もはや何にも希(ねが)ふまい、
私はそいつで一杯だ。

身も魂も恍惚(とろ)けては、
努力もへちまもあるものか。

  季節(とき)が流れる、城塞(おしろ)が見える。

私が何を言つてるのかつて?
言葉なんぞはふつ飛んぢまへだ!

  季節(とき)が流れる、城塞(おしろ)が見える!



―――んじゃ、最後に、ランボオの代表的な作品=『母音』を比較してみよー。

栗津則雄訳 → 『母音

A(アー)は黒、E(ウー)は白、I(イー)は赤、U(ユー)は緑、O(オー)は青、母音たちよ、
おれはいつかおまえたちの秘められた誕生を語ろう、
A(アー)、無残な悪臭のまわりを唸りとぶ
きらめき光る蝿どもの毛むくじゃらの黒いコルセット、

かげった入江。E(ウー)、靄と天幕の白々とした無垢、
誇らかな氷河の槍、白い王たち、繖形花(さんけいか)のおののき。
I(イー)、緋の衣、吐かれた血、怒りにくるった、
あるいは悔悛の思いに酔った美しい唇の笑い。

U(ユー)、循環期、緑の海の神々しいゆらぎ、
家畜の散らばる放牧場の平和、学究の
広い額に錬金の術が刻む小皺の平和。

O(オー)、甲高い奇怪な響きにみちた至高の喇叭、
諸世界と天使たちがよぎる沈黙
―――おおオメガ、あの人の眼の紫の光線!


堀口大學訳 → 『母音

A(アー)は黒、E(ウー)は白、I(イー)は赤、U(ユー)緑、O(オー)青よ、母音らよ、
何時(いつ)の日かあれ語らばや、人知れぬ君らが生い立ちを。
Aはそも、痛ましき悪臭に舞いつどう銀蝿の
毛羽立てる黒の胸衣(むなぎ)よ、暗き入江よ。

またEは、靄と天幕(テント)の純白よ、
毅然たる氷河のきっ先、白衣の王者、繖形花(オンベル)のかすかな顫(ふる)え。
Iは緋衣(ひごろも)、喀(は)かれし血、怒りに或るは
悔悛に酔う人の、美しき朱唇(しゅしん)の笑(えま)い。

さてUは周期なり、緑なす海原の、神さびしわななきなり、
獣たちやすろう牧の平和なり、錬金の術を究むる
博士らの額の皺の平和なり。

Oはそも天のラッパよ、甲高く奇しき響の、
天界と下界をつなぐ沈黙よ、
―――オメガなり、神の眼の紫の光なり!

中原中也訳 → 『母音

A(アー)は黒、E(ウー)は白、I(イー)は赤、U(ユー)は緑、O(オー)は青、母音たち、
おまへたちの隠密な誕生をいつの日にか私は語らう。
A、眩(まば)ゆいやうな蝿たちの毛むくぢゃらの黒い胸衣(むなぎ)は
むごたらしい悪臭の周囲を飛びまはる、暗い入江。

E、蒸気や天幕(テント)のはたゝめき、誇りかに
槍の形をした氷塊、真白の諸王、繖形花顫動(さんけいかせんどう)、
I、緋色の布、飛散つた血、怒りやまた
熱烈な悔悛に於けるみごとな笑ひ。

U、循環期、鮮緑の海の聖なる身慄(みぶる)ひ、
動物散在する牧養地の静けさ、錬金術が
学者の額に刻み付けた皺の静けさ。

O、至上な喇叭(らっぱ)の異様にも突裂(つんざ)く叫び、
人の世と天使の世界を貫く沈黙、
―――その目紫の光を放つ、物の終末!



つーワケで、色々なランボオを読んで来たけど、ハッキリ言って、キリがねーから、そろそろこの辺でやめよーと思う。
んで、俺の個人的な好みで言うと…
やっぱ、小林ランボオがいちばん好きかも。

A(アー)はランボオ、E(ウー)は小林秀雄、I(イー)は堀口大學、U(ユー)は金子光晴、O(オー)は中原中也、詩人たちよ、
みんな、面白ぇ~ぞ、お前ら!
オメガなりィィィ~~~!!
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by inugami_kyousuke | 2008-05-25 00:22 | 文学