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犬神狂介の【狂人日記】

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キッチンウォーズ

●面白かった!
天海祐希主演の2時間ドラマ。
基本的なストーリーは、逆『クレーマー、クレーマー』だ。
専業主夫、子育て、女性の社会進出…といった非常にオーソドックスな題材を取り上げながら、上手くまとまっていた。
この作品に深みを与えたのは、ひとえに松坂慶子の存在によるところが大きい。
松坂慶子が非常に「いい声」をしていると、今回、改めて気がついた。
丸く、包み込むような、優しい、「母性」を現わす今回の役柄にピッタリの、「いい声」だ。
ストーリー的には、特に目新しいところは無かったものの、この作品の見所は、バリバリのパワーエリートであった天海祐希が、夫を交通事故で失い、1人娘とたった2人だけで生きて行かなくてはならなくなった時、改めて、「料理」という1つの象徴を通して、自分と家族というものを再発見してゆく過程にある。
人は、人生において、何かを得ようとすると、何かを諦めねばならない。
もちろん、「欲しいモノがなにもかも手に入る人生」がサイコーに決まっているが、人生はそんなに甘くない。
どんなに欲ばっても、人間には、手は2本しかない。
いっぺんに2つのモノをつかむコトは出来ないのだ。
1つをつかんだら、もう1つは放さねばならない。
天海祐希演じる真琴という女性の思考は、ひと昔前の男性上位主義のオトコたちの考え方と何ら変わらない。
「アタシが外でバリバリ働いて、おカネを稼いでいるから、アンタたちは暮らして行けるのよ!」とゆーセリフは、まさに、オトコとオンナが逆になっただけだ。
安室奈美恵の曲に「LOVE2000」とゆー曲があって、戦争というものの本質を描ききった名曲だと思うのだが…
大切なものを守るため、不本意ながら戦いを選んだ者たちが、いつしか変質してしまい、逆に、結果として、大切な者を殺めてしまう…という、憎しみの連鎖を描いている。
「手段」が「目的」化する過程を、極めて明確に表現している。
「労働」でも、この図式はあてはめられる。
本来、「生活に必要な金を得るため」の「手段」としての労働が、いつの間にか、「目的」化してしまい、逆に「目的」であるはずの「生活」自体がおろそかにされてしまう…
まさに本末転倒だが、コレが現実だ。
「自分が食わせてやっていた」のではなく、実は「働かせてもらっていた」のだ、という真実が、「料理」という、かつて夫がたどった道を、真琴が同じ目線で見るコトによって、少しずつ明らかになってゆく展開が見事だった。
「社会で人と競争するコトがキライで、家庭という安易な選択肢に逃げ込んだダメ男」だと思っていた自分の夫が、何を考え、どれだけ自分を殺し、家族に与えて来たか…
自ら追体験しなければ、決して分からなかった真実に到達して、初めて真琴は自分と家族の真の関係を再構築出来たのである。
味の素KKの一社提供だったため、番組とCMが地続きになっており、ドラマの出演者がそのままCMに出演しているのも、コミカルで面白かった。
「家事」という名の「不払い労働」問題は、いつの世にも、カタチを変えて、なくなることはない…というコトなのだろうか?
ルンバ山田(武田真治)のコミックは、明らかにねこぢるだったが…
なぜ、ねこぢる~!?
by inugami_kyousuke | 2006-02-27 00:26 | テレビ